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2012/09/14

ビトウィーン・ザ・バトンズ / ローリングストーンズ

聴いた場所〔電車(通勤)〕

1967年1月にリリースされた、全曲ジャガー&リチャーズ作のオリジナルアルバム。
私が所有しているのは「夜をぶっとばせ」「ルビーチューズデイ」が未収録の英国盤となります。
オープニング「#1 Yesterday's Papers」のイントロから漂うふわふわとしたポップ感。
歌詞こそ〔ヤリ捨てた女は古新聞、いらねぇっつうの〕という昭和的ハレンチモード全開なストーンズ節ですが、音楽的な黒さや激しさは影を潜める不思議な立ち上がりです。
その後も「#7 All Sold Out」「#9 Who's Been Sleeping Here?」など、肩すかしにも近いソフトなナンバーの連続。
元祖不良ロックのギミックを棚上げして、全編「ズンチャカ、ズンチャ♪」とポップ+キュート路線を突き進みます。
そしてこのギミックチェンジの功労者は、当時まだ逮捕歴なしの不良番長・キースリチャーズ。
「#4 Connection」「#12 Something Happened To Me Yesterday(昨日の出来事)」でボーカル部門に挑戦したキースの唄声は、言われてみれば脱力系ポップ。この異色アルバムのコンセプトにぴったりハマります。
とくに「#12」におけるミックジャガーとの掛け合いは、お坊ちゃん2人による仲良しソング風情。
カタギの私ですら「お前らピクニックでも行ってろ」と凄みたくなる程のノホホ~ンぶりです。

時は昭和42年、この年はビートルズの金字塔「サージェントペパーズ…」を筆頭に、ドアーズ初陣「ハートに火をつけて」、ジミヘン初陣「アーユーエクスペリエンスト」、バナナ「ヴェルヴェットアンダーグラウンド」など猛者達によるお花畑系作品が目白押しでした。
そんなフラワーな年のキックオフ盤がこの「Between the Buttons」。
諸氏のレビューでは「過渡期」というフレースが多く見受けられる、ストーンズ流に時代を取り込んだ(あるいは取り込まれた)作品と言えるのでしょう。
例によってミックジャガー伯爵はお気に召していないようですが、私は結構好きでよく聴いています。それこそ、ノホホ~ンとしたい時にはピッタリです。

ともすれば“黒歴史”にもなりえる作風、しかしそれは年末リリースの珍盤「サタニックマジェ何とか…」が全部持っていってくれました。
初めて聴いたストーンズがこのアルバムだったら存在ごと却下になるかもしれませんが、長い大河ドラマ中の1エピソードとして捉えるととても味わい深いアルバムだと思います。