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2012/12/19

座頭市物語 #23「心中あいや節」

録画した日〔2012/9/8:時代劇専門チャンネル〕

座頭市軍団がホーム太秦を離れて雪国に遠征(福井県・芦原温泉方面)。
リリー・浅丘ルリ子を「はなれゴゼ」役として迎え、極寒の地で凍えるような情念ドラマを繰り広げます。
「ゴゼ(=瞽女)」とは、一座を組んで地方を廻る盲目の女性旅芸人の意。
浅丘ルリ子は初代松ケン・松平健のアタックにより禁忌事項を侵してしまい、「はなれゴゼ」として一座から追放されてしまいました。
二重三重のネガティブオーラを身に纏った浅丘ルリ子が繰り出す「ゴゼ唄」はまさしくソウルミュージック、淡々としながら狂気にも似た異様なエネルギーを放ちます。
特に雪道で野垂れ死ぬ不遇ゴゼに「あいや節」を捧げるシーンは完全グロ、トラウマ確定の壮絶路上ライブでした。
そんな浅丘ルリ子を一途に追いかける松平健は名門庄屋の跡継ぎ息子(妻子あり)。オープニングのクレジットには「松平健(新人)」と記されています。
当時リアルで座頭市の付き人をしていた朴訥風情の暴れん坊将軍。
「オメエ今度浅丘ルリ子の相手役だから」とボスからの超展開キラーパス1本で重厚役者人生のスタートを切った、本人にとってはもちろん日本芸能史にとっても重要な作品と言えるでしょう。

映像関連の玄人スジから"大傑作"と賞賛されてるらしい、この「あいや節」。
監督は座頭市本人。とにかくどのシーンも寒くて暗い、冬の日本海特有のずっしり重たい空気が覆い尽くします。
常連ヒール・石橋蓮司が憤死するもののメッタ斬りは無し、お馴染みのテーマ曲「おてんとさぁ~ん」もカットされ、明らかに「仕掛けてきた」雰囲気がプンプンです。
関連情報によると、京都のホテル「フジタ」の窓から鴨川でイチャつくカップルを覗き見してインスピレーションに着火。
ここから座頭市のエンタメ脳がフル回転、あれよあれよとトラック10台で大雪の越前福井に乗り込んだとの事。
劇中登場のくたびれた宿屋も超A級職人連中による突貫工事の「セット」であった模様。
業界の最強軍団を使い倒し、引き摺り回し、ハイテンションで描いた極限の鬱展開。天才・座頭市のエネルギーが「暗」の方向に爆発した、ひたすらに重い名作だと思います。