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2013/12/25

タイガーマスク #90「無冠の王者」

録画した日〔2013/12/20:TOKYOMX〕

ミシガン州デトロイトに乗り込んだミスターX。
伊達タイガーの刺客として、地元の有望レスラーを日本マットに送り込む事が目的です。
ミスターXが目を付けたのは絶大な人気と実力を誇る「ザ・ミシガニアン」でした。
ちなみに北部デトロイトはアラビアの怪人ザ・シークのテリトリー(当時)。
下手な引き抜きビジネスを仕掛けた場合、顔面に報復の火炎攻撃を食らう危険性をはらんでいます。
ミシガニアンはそんなレスリングビジネスと一線を画す孤高の賢人タイプ。ミスターXが提示した高額のファイトマネーに心を動かす事はありませんでした。
ちなみに「中の人」はビッグネーム・森山周一郎氏が担当。
その苦みばしった風貌など、名優・チャールズブロンソンへのオマージュと思われます。
金や名誉で動かないはずのミシガニアンですが、結局ミスターXと日本行きのジェットに搭乗。
しかしこれは黒い勧誘に陥落したためではなく、伊達タイガーと真の闘いを追求するための決断でした。
この手の「理想のプロレス系」離合集散は、昭和のプロレスファンが何度も騙されたもの。
まあ、ミシガニアンには大タニマチなど背後関係がなさそうなのでとりあえず信用してもいいでしょう。
ところが来日したミシガニアンは、日プロブッカーの馬場さんに直接プロモートを依頼する仰天行動に打って出ます。
虎の穴のブラック要素を排除したいが故の直談判ですが、これはプロレスラーとして最悪のダブルクロス中抜け行為。
ビジネスに興味が無いのとルールを守らないのは別の話。どうにも七面倒臭いガチンコ野郎です。
一方の伊達タイガーは、ミシガニアンに付きまとう虎の穴の影にやや訝しげです。
しかし、最近は八百長レスラー・アキラローゼとのシングル戦などマッチメイクに恵まれていない事も確か。
真の闘いを求める漢2人は、引き寄せ合うかのごとく日本武道館での一騎討ちを迎える事となりました。
シューター同士のマッチアップは、ともすれば自己満足のバチバチ系、ネチネチ系の攻防に陥りがち。
しかしそこはそれぞれ日本、デトロイトでトップを張る両雄。
あくまでもプロレスの範疇でスイングし、武道館を感動と熱狂の坩堝へ誘います。
エプロンから凶器を手渡すミスターX。この悪徳プロモーターもあくまでプロレスの範疇でスイングしたかったのでしょう。
しかし、これをミシガニアンが良しとするはずはなし。
律儀なヒールムーブはガチな無冠の帝王に即刻却下されてしまいました。
フルタイムドローに終わった不純物ゼロのピュアな一戦。試合後の清涼感は1988.8.8横浜文体の猪木vs藤波に近いものでしょうか。
すべてを出し切った正統派ファイトに、両雄はもちろん武道館のお客さんも大満足です。
かたや大団円のバックヤードでガックリ落ち込むミスターX。
遠路招聘した刺客が逆に伊達タイガーの闘魂に火を点けてしまうという、無能丸出しの完全なウラ目状態です。
もはや通常業務でのリカバリは不可能な段階か…。
幾多の同業者がそうしたように、リングに登場して面白おかしく痛め付けられる道も視野に入れるべきでしょう。