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2014/04/11

全日本プロレス王道史(#23)

録画した日〔2013/3/30:サムライTV〕

昭和57年の年間ベストバウトに選出された2.4東京体育館・馬場vsハンセン
その2ヶ月後の4月22日、場所も同じ東京体育館で両者のリマッチ(PWFヘビー級戦)が行われました。
両リン決着ながら不沈艦を退け虎の子12回目の防衛に成功した馬場さん。
なんだか渋い顔なのは試合終盤に食らったウエスタンラリアットのダメージではなく、そのちょっと前にやらかした「大ポカ」が起因しているものと思われます…。
興行面はもちろん、自らのキャリアにおいてもドル箱となった遺恨戦にゴング直後からトップギアの馬場さん。
「2.4」で見せた腕殺し戦法とのアクセントなのか、この日はジャイアントキチンシンク、ジャイアントストンピングといったキック系の打撃技を中心にハンセンをグイグイと引っ張ります。
一方、電撃移籍から4ヶ月のハンセンもすっかり新天地の水に馴染んでエンジン全開。
時折繰り出す不規則で危なっかしいムーブは、馬場さんとの信頼関係が順調に構築されている証とも言えるでしょう。
そんな両雄のド迫力ファイトに10,200人超満員の東京体育館は大熱狂。
これを受けて更にギアが上がったのか、試合終盤、馬場さんは人類初の驚愕ジャイアント殺法を発動しました。
河津落としでハンセンをダウンさせた馬場さんは亀の歩みでやおらコーナーポストへ。
まさかまさかの超展開に、実況席のホラ吹きコンビ・倉持アナ&東スポ山田さんも状況に食らい付くのがやっとです。
(コーナーポストを1段1段ゆっくり登る馬場さん)
倉持アナ「そして馬場がぁ、何を出すのか!」「ウルトラCか!!、G馬場のウルトラCか!」
山田さん「…」
(セカンドロープあたりで既によろよろの馬場さん)
倉持アナ「セカンドロープ!」「そして、おっとトップロープに馬場がアガった!!」
山田さん「…」
(起き上がるハンセン、それを見て更によろよろの馬場さん)
倉持アナ「そして何だ!!」「そしてアーッと!」
山田さん「…」
(ボテっと降りた馬場さん、もちろん着地失敗)
倉持アナ「ニードロップは失敗」「ウルトラC、ジャイアントストンピングと言っていいでしょうか…」
倉持アナ「ウルトラC、失敗ですねぇ!」
山田さん「そうですねぇ、ジャイアントストンピングを狙ったんですねぇ」
倉持アナ「そうですねぇ、惜しい…かったですねぇ」
炎の飛龍・藤波が得意としている“ドラゴンリングイン”の劣化版となってしまった「大ポカ」ジャイアントストンピング。
案の定この直後ハンセンに捕獲され、ノド笛に必殺ウエスタンラリアットをブチ込まれてしまいました。
一連のシチュエーションで思い出すのは美獣・レイスとのNWA公認デッドリードライブコント。
自分も一度はブン投げられてみたかったのか?、馬場さんの意図はまったくもって不明です。
名勝負数え唄にもなり得た黄金カードもこの「大ポカ」によってちょっとスポイル気味に。これも昭和プロレスのミステリー、謎掛けの一種なのでしょう。

その「投げられる側」のハーリーレイスは、同年8月の後楽園大会でジャンボ鶴田が持つUNヘビー級ベルトに挑戦しました。
この時点では最高峰NWA戦線からちょっと距離を置いている美獣。WWAヘビーとかいうローカルチャンプとして悠々自適に王座奪取を狙います。
試合は大流血戦の末にレイスがピンフォール勝ちで戴冠というやや意外な結末。
善戦マンを返上すべく、この6月に星3つパンツからフォーマルな黒パンツへ衣替えしたジャンボ。
いちおうエクスキューズ的な「きわどい判定」があったものの、ファンのガッカリ感を増幅させる陥落劇です。

名シーン続出の昭和57年を締め括ったのは、ファンクスvsハンセン&ブロディの世界最強タッグ優勝戦。
この年大旋風を巻き起こした超ミラクルパワーコンビが初出場初優勝を賭けて臨む暮れの本場所千秋楽です。
翌年引退という大ボラをブチ上げていたテリーにとって、これが体面上いちおう最後の最強タッグ。負けられない気持ちはハンセン&ブロディより強いでしょう。
なお、ファンクス関連なら偏向報道も厭わない倉持アナによると、満身創痍のテリーの元には全国の熱狂的ファンからファンレター、千羽鶴、安眠用マクラなどたくさんのプレゼントが寄せられているそうです。
前年「12.13」蔵前事変の精算でもある大一番は超ミラクルパワーコンビの独壇場。合体技や連携プレーは少ないものの馬力とスピードで師匠ファンクスを圧倒します。
そして今年も場外戦で火を吹いたハンセンの必殺ウエスタンラリアット。
犠牲者は今年ももちろん荒馬テリーファンクでした…。
冬の蔵前に現れたテキサス育ちの極彩色ド派手なミノ虫。
テリーのバンプ芸は引退目前(?)にしてアートの域に達したと言えるでしょう。
しかし弟が場外で紙テープぐるぐる巻きという事は、リング内では兄・ドリーが孤軍奮闘のサンドバッグ状態という事。
毎度毎度のネタではありますが、必勝を期す兄弟コンビに絶望の赤信号が灯ります。
一気に大荒れとなった試合を締めるのはもちろん脆弱性レフェリー・ジョー樋口。
ハンセン&ブロディのツープラトン攻撃に無理やり突っ込んでルーチンワークの失神KO。テリーをも凌駕する極上のパフォーマンス、まさしく日本プロレス界の至宝です。
最終的には鉄人ルーテーズが超ミラクルパワーコンビに反則負けを宣告。ファンクスが最後の大会を見事優勝で飾りました。
ちなみにプロレス界の大正義・ルーテーズのポジションはジョー樋口のサブレフェリー。
なんだか根本的に間違っているような気がします…。

ハンセン&ブロディを金看板に、ファンクス、レイス、フレアー、スヌーカ、リッキーetc…全日マットを飾る超S級外人レスラー。新日では2年目の佐山タイガーが完全ブレイク。
思い出補正は多分にありますが、私はこの昭和57年頃から2,3年が一番プロレスが面白かった時期だと思ってます。
あれから32年ぶりに見た3試合、諸々の事情やお約束を知ってしまった上でも十二分に面白い事を再確認しました。
ただし、馬場さんのジャイアントストンピングの謎は何年経っても解けないままでしょう。