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2014/07/04

全日本プロレス王道史(#39)

録画した日〔2013/3/30:サムライTV〕

昭和59年に行われた4試合をごった煮。
8.26田園コロシアム大会では「2代目」タイガーマスクが待望のデビューを果たしました。
真夏の夜の田コロに出現した新生虎仮面。初代に比べるとスラっとスマートな第一印象です。
この謎に包まれた2代目について、実況・倉持アナは「上背のあるNewタイガーマスク」というガキでも言える見たまんまの薄っぺら情報を流すのみ。
ヒネた客からの「佐山」コールを凌いで注がれた「ミ・サ・ワ」とかいうコールに、その正体を探るヒントがあるようです。
そんな2代目の正体云々はともかく、あれから30年ぶりの視聴でチェックしたいのは「ラ・フィエラ」とは何奴だったのかというポイント。
試合中盤に敢行した完璧な場外プランチャスイシーダは、7年前(昭和52年8月25日)の田コロ・ミルマスカラスへのオマージュか。
その他一連の淀みないムーブから、一介のジョバーとはワケが違う極上のポテンシャルを感じさせます。
日テレインチキ実況席唯一の良識派であるゴング竹内氏によれば、このラ・フィエラは「NWA系CMLLのトップルード」だとの事でした。
当時はどうでもいい茶パンツ野郎という印象でしたが、ちゃんと見れば面構えも含めニューヒーローのスタートアップ着火剤にはうってつけのキャラ。
本人および馬場さんが本腰を入れてれば、キッドvs佐山タイガーの様なライバル列伝を紡ぐ事ができたのかもしれません。
試合は8分すぎにタイガーが変形スープレックスでフィエラを成敗。
2代目について全く情報が無いと嘆いていた倉持アナでしたが、何故かこのフィニッシュホールドだけは「タイガースープレックス84(エイティフォー)!!」とスラスラ淀みなく実況をまとめました。
良くも悪くも無難なデビュー戦。ここから「2代目」が歩む25年のドラマ(およびその最終章)をこの時に想像し得た者はいないでしょう。
後天的ながら、8.26田コロは日本プロレス史の超重要ポイント。
その伝説の一翼を担ったラ・フィエラは「2代目」が亡くなった翌2010年に天に召されたそうです。

換金方法不定義の1,000万円ハリボテ小切手を掲げるハンセン&ブロディの超ミラクルパワーコンビ。
4.25横浜文体決戦で馬場&ドリーを粉砕し、プロレス2大与党(NWAとAWA)が公認するPWF世界タッグの初代チャンピオンに輝きました。
日本デビュー3年目に突入した超獣コンビは、全日大本営の倉持アナが「どうにもならないパワー」とシャッポを脱ぐ程のリミットレス絶頂状態。
合体パイル攻撃では馬場さんの首を破壊して連続試合出場記録(3,711試合。ただし根拠不明)を強制終了。ファンも含めたプロレス旧世代連中に無慈悲な現実を叩きつけます。
昭和59年はハンセン&ブロディの実質的ラストイヤー。
年末の最強タッグでは鶴龍コンビに花を待たせたため、この4月のPWFタッグ戴冠が最後の成果物となりました。
マンネリや劣化とは対極の次元を突き進むべき2人。
昭和57-59年の足掛け3年というスパンは物足りない気もしますが、ファンにとっても実にキリのいい太く短い蜜月だったのではないでしょうか。

西陣織の豪華なガウン(倉持アナによると2年ぶりの着用)に身を包み7.31蔵前国技館のリングへ足を踏み入れた馬場さん。
前年9月に奪われたままの虎の子・PWFベルトを取り返すべく、背水の陣で不沈艦ハンセンに挑みます。
この日のお客さんは熱烈に馬場さんを支持。
ただしこれは、圧倒的な力量差が明白であるがゆえの判官贔屓。
倉持アナに「より以上のコンディションを求めるのは、馬場にとってはもう無理ですからねぇ♪」と直球を投げ付けられるなど、崖っぷちの馬場さんに勝ち目ゼロという空気が蔵前に充満します。
しかしこんな時にミラクルが起こるのがプロレスの魅力。
ハンセンの猛攻を凌いで凌ぎまくった馬場さんは、一瞬の隙を突くジャイアント小包固めを繰り出し、見事PWF3度目の返り咲きを果たしました。
ちなみにこの時馬場さんは46歳。これがキャリア最後のPWF戴冠となります。
一方、デカい馬場さんにちっちゃく丸め込まれたハンセンはいつもに増して大暴走。
若手へのお約束ボーナスラリアット(犠牲者=マジックドラゴン)では収まらず、なんとPWFの“聖域”ロードブレアース会長をボコボコに。
一般社会では許されない大暴挙をブチかました不沈艦は、パンチパーマの川田利明を引き廻しながら支度部屋へ引き上げていきました。

鶴龍や超獣コンビの他、キッド&スミス、レイス&ニックなど空前の豪華メンバーが集結したこの年の世界最強タッグ。
彼らへの対抗心なのか開幕前「ミステリアスパートナー」としょーもない煽りを掛けてた馬場さんの相棒は、なんと格闘集団UWF上がりのラッシャー木村でした。
出落ち感も多々あるそんな大物タッグにとんでもない激震が走ったのは、リーグ中盤のヤマ場12.8愛知大会。
鶴龍コンビとの世代闘争マッチ最中に、ミステリアスラッシャーがまさかまさかの謀反を企てます。
晩年における両者のギミックをふまえると実に微笑ましい兄弟げんか。
しかし当時まだまだバリバリだったラッシャーは、この勢いで剛竜馬や鶴見五郎ら華のないキャラ達と地味ユニット「国際血盟軍」を結成。全日正規軍と地味な軍団抗争を繰り広げていきます。
なお、この日の愛知県体育館にはその「血盟軍」より100倍も1000倍もキャッチーな「長州軍」一派が来場。
契約云々で揉めないよう、生放送終了時間にきっちり合わせて鶴龍率いる全日正規軍と乱闘を繰り広げたとの事です。
豪華外人勢を置き去りに、仲間割れやら乱入やら軍団抗争やら超展開連続の12.8。終始ザワザワとした“らしくない”興業でした。

夏のタイガー登場から年末最強タッグに掛けて燻っていた王道変節の予兆は、翌年の長州軍、ロードウォリアーズの参戦やゴールデンタイム復帰などで一気に具現化。
全日マットは対象年齢をグッと下げたコンテンツに侵食されます。
当時クソガキながらもそんな路線変更に何となく馴染めなかった私にとって、この昭和59年は夢中で全日本プロレスを見た実質的なラストイヤー。
ハンセン&ブロディよろしく、王道マットに一区切りを付けた年となりました。