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2014/12/23

新座頭市物語 折れた杖

録画した日〔2014/2/14:日本映画専門チャンネル〕

昭和47年9月公開の作品。
シリーズ24作目にして、初めて座頭市本人が監督を努めました。
漁師の町・千葉県銚子市に降り立った座頭市。
担いでる三味線は、吊り橋ですれ違ってそのまま足をスベらせて川に落っこちちゃったオバちゃんの遺品。
この三味線をオバちゃんの娘さんに届ける事が今回の訪問目的となります。
そして座頭市がほどなく遭遇した娘さんは貫禄満点の太地喜和子。地元遊郭で性サービス嬢をしていました。
裏稼業で心がスレてしまっているのか、太地喜和子はお母さんの訃報にも薄いリアクション。
良かれと思って遠路遥々やって来た座頭市とはけっこうな温度差があるようです。
お母さんを助けられなかった自責の念もある座頭市は、形見を手渡した上で太地喜和子に遊郭からの円満退社を提案。
さっそく地元の賭場で超絶イリュージョンを炸裂させて一稼ぎ。ヒール女将・春川ますみに証文引き渡しの50両をキャッシュで即納しました。
座頭市の絨毯爆撃を食らった賭場の経営者は悪人フェイス丸出しの小池朝雄。伊勢丹の紙袋みたいな着物の藤岡重慶はその番頭格の子分。
彼らは銚子の漁師たちから金だけでなく漁場までも毟り取る実に憎たらしいヒール軍です。
刑事コロンボと丹下段平という豪華ヒール師弟。ドスの効いた声の魅力はもちろん、その顔芸も極上のクオリティと言えるでしょう。
彼らがラストでいかに無様にブッタ斬られるのか…。序盤戦からワクワクがとまりません。
一方座頭市は自由の身となった太地喜和子の身元引受人に。とりあえず一軒家での2人暮らしを始めました。
もちろんそれに並行して、賭場の一件やら全国区の賞金クビ案件やらで小池ヒール軍のターゲットにもなっています。
晴れて夜の商売から卒業したはずの太地喜和子でしたが、染み付いた悪習は容易く抜けないもの。
せっかくの好意を「アンタの自己満足」と一蹴し、もともと脈があった地元の若造・中村嘉葎雄を闖入させるなど座頭市流のプラトニックな生活に迎合する気構えはありません。
そして当然のごとくヒール軍とつながっている間男・中村嘉葎雄。太地喜和子を使って座頭市を小池朝雄の本拠へと誘導します。
これにまんまと引っ掛かった座頭市。
憎々しい顔芸大全開の小池朝雄から、人質救済or武力放棄の卑劣な二者択一を迫られてしまいました。
座頭市の判断は仕込み杖の放棄。
確勝モードの小池朝雄は漁師のモリで両手の甲を突き抜くというダメ押しまで敢行。フィニッシュはヒール界の大ボス・大滝秀治の御前試合として温存する算段です。
まあもちろん、ここでクビを掻っ切らなかった事が小池朝雄にとって痛恨の大ポカとなるんですが…。
大ポカモードの小池朝雄は武士の情けで仕込み杖を返却。両手が潰れてるんだから脅威ゼロという判断です。
これを受けた百戦錬磨の座頭市は、仕込み杖を右手に括り付けての武装スタイルに転換。一気にヒール軍掃討へ打って出ます。
手負いのメッタ斬りマシンと化した座頭市。
余裕の勝ち戦と目論んでいた小池朝雄と藤岡重慶は目の前で繰り広げられる殺戮劇に唖然ボー然。せっかく招待した大ボス・大滝秀治はショッパイ試合に怒って途中退席してしまいました。
こうなると後はもうヤラれるだけの丸腰ヒール師弟。
期待に違わぬヘタレっぷりと顔芸をスクリーンに振り撒きつつ、往生際悪く逃げ惑った末の完全KOです。
2人が恨むべきは、しょっぱなで吊り橋から落っこちた太地喜和子のお母さんでしょう。
そんなこんなで面白おかしくブッタ斬られたコロンボと段平は実は数少ないネタ要素。
漁師町の荒んだ歓楽街が舞台のこの作品は、肉体的、社会的その他諸々のハンディを持った人が織りなす鬱展開が満載でした。
監督・座頭市が持つ負の要素が色濃く滲んだ決してスカッとしないエンターテイメント。
部屋で1人で見る分には味わい深いんですが、当時映画館で見た人達は救いのないストーリーのどこにカタルシスを得たのでしょうか…。
大きなお世話ですが公開年に生まれた私としてはとても興味深いところです。