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2015/07/24

プロレスクラシック(113) 天龍革命へ! “天龍同盟”発進

録画した日〔2014/9/15:日テレG+〕

昭和62年4~6月にかけて行われた試合をピックアップ。
5.1後楽園大会では、元幕下・琴天山(琴天太)ことジョンテンタが待望のプロレスデビューを果たしました。
アマレス世界Jr王者という屈指のキャリアをベースに、大相撲序ノ口-序二段-三段目を無敗(21連勝)でブッコ抜いたという超フィジカルエリート・テンタ。
弱冠23歳にして御大馬場さんを従えたVIPデビュー戦には“最強論”のエッセンスが満載です。
テンタの相手を務めるのはラッシャー木村&鶴見五郎。
ゲリラ戦法で馬場さんのクビを狙う「国際血盟軍」タッグですが、大将ラッシャーが着てるのはジャイアントサービスで買ったババシャツ。聖地に微妙な空気が漂います。
試合は、テンタが母国発祥の(?)カナディアンバックブリーカーを連発するなど大器の片鱗をこれでもかと見せつける展開。
しかし最後は昭和の伝統“試合の権利”マジックでラッシャーがリングアウト負けという不透明決着となってしまいました。
馬場さんのクビを獲り損ねた血盟軍は怒り心頭。
たまらずマイクを握ったラッシャーは「馬場ぁ、こんな判定あるかっ!」と鬼の形相でNew師弟コンビへ詰め寄ります。
すわ番外戦か?とざわめく聖地。しかしここからラッシャーは突如軟化。
「馬場に久しぶりに会ったから興奮しちゃったんだよ」と馬場さんへしなを作ると「琴天山っ、馬場にもっと鍛えてもらえこの野郎!」と敵勢にエールまで送る始末です。
このツンデレっぷりには宿敵馬場さんも思わずニヤリ。
田コロのトラウマを糧にしたラッシャー渾身のマイク芸は、この後四天王パッケージプロレス期を彩る前座目玉コンテンツまでへと昇華します。
後楽園のひな壇裏に引き上げた馬場さんの表情はニヤリからニッコリへUP。
それもそのはずこの日のテンタは文句なしの出来栄え。前年デビューで何とかモノになってきた横綱輪島に引き続き、角界からビッグなプレゼントをもらったかたちです。
ちなみにこの日の後楽園ホールにはあのラジャライオンも来場。
翌月の「顛末」を知ってる者からすれば、ファイターチキンでも食ってろこの木偶の坊、とヤジの1つでもカマしてやりたい気持ちになります。

馬場さんやラッシャーなど優しい先輩のおかげでテンタは順風満帆。
6.8福岡大会ではこれまた優しそうな先輩・ジャンボ鶴田とタッグを結成。デビュー1ヵ月にして早くもインタータッグ王座に挑戦です。
迎え撃つインタータッグ王者組は「4日間の特別参戦」「20世紀最強」と倉持アナが煽りまくる無敵の暴走戦士・ロードウォリアーズ。
テンタからすりゃ相手に不足なんかある訳がありません。
暴走戦士と向き合って分かるのは、サイズだけ見ればテンタが互角以上だという事。
さらに「ナチュラルさ」という観点でもテンタに軍配か。
実際テンタはこの数年後「ナチュラルディザスターズ」としてウォリアーズ(LOD)と互角の因縁抗争を展開することになります。
5分経過のアナウンスを聞かずに轟沈してしまったテンタですが初のビッグマッチは随所に見せ場あり。
角界を抜けた経緯はともかく誰がどう見ても将来有望な23歳。残念なのは弱そうな大型犬みたいなそのルックスだけのようです。

長州たちが去った全日マットで“天龍同盟”をブチ上げんとするUN王者・天龍源一郎。
正式スタートは龍原砲結成(再)の6月からですが、この5.9長野大会のベルト防衛戦でもその火種はくすぶり始めていました。
チャレンジャーは長州について行かなかった谷津嘉章。
いろいろあったにせよ結果的に谷津は変化を嫌った男であり、革命前夜の天龍からすれば今後のベクトルを示す意味でも叩き潰しておくべき相手です。
実力者同士白熱の攻防となった一戦はちょっと不本意な両リン決着。
しかし新生天龍の真骨頂はここから。
ベルトやらトロフィーやらのセレモニーを放棄して不機嫌そうに支度部屋へ直帰。興業の締めを谷津に丸投げしてしまいました…。

5.30高松大会で天龍に立ちはだかったのはインドの狂虎・タイガージェットシン(相方・テキサスレッド)。
放送席の倉持アナは「どうしてこう、ピリピリするんでしょうか」とシンを怖れますが、ピリピリしてるのはむしろ天龍の方です。
天龍の相方は輪島大士。従来なら大相撲コンビとして横綱をサポートする天龍ですがこの日はシンの極悪バケツ攻撃にも知らんぷり。
レッドを軽くヒネってチャッチャと支度部屋に直帰してしまいました。
一方、いつも真っ直ぐお客さん思いの輪島はシンと場外番外大乱戦を敢行。
しかし息も絶え絶え戻った先は無人のリング。丸い土俵の固い絆で結ばれたパートナーはもうそこにはいませんでした…。

“猛虎七番勝負”真っ最中の三沢タイガー。6.1石川大会はその第5戦、兄貴分である天龍の胸を借りました。
硬軟織り交ぜの「ちょっとイイ話」がたくさんある天龍と三沢ですが、どうやらこの日はそうも言ってられない感じです。
例によって厳しい攻めに徹する天龍に対して三沢タイガーは一生懸命順応。
ちなみにWikipediaによると、御大馬場さんはこの日の天龍の闘いぶりを見て龍原砲(=天龍同盟)結成にGOサインを出したんだそうです。
最後は天龍が豪快パワーボムで貫禄勝ち。
ダウンした三沢タイガーが目を覚ました時にはもうリング上は一人ぼっち。頼れる兄貴・天龍は付け人・小川良成とあっという間に支度部屋へ直帰しています…。

そしていよいよ迎えた6.8 福岡大会。
盟友・阿修羅原との「龍原砲」がついに昭和の茶の間にその勇姿を現しました(TVマッチ初登場。肝心の初陣6.6山口大会はノーTV)。
対戦相手は輪島&石川の大相撲仲良しコンビ。「行かせろって」と滾る横綱を前頭石川が必死になだめます。
しかし、そんな微笑ましい定番ムーブも今の天龍にとっては受け入れがたいピリピリの素。こうした旧様式の否定こそ天龍が起こさんとしているレボリューションなのです。
「全日活性化」という大義のもと、横綱をボコるというタブーに足を踏み入れた天龍。
このガンガン来る関脇天龍に対してガムシャラに食らい付いた横綱輪島こそ、足掛け4年に渡った天龍同盟(革命)の成果物第1号だったと言えるでしょう。

いかにも全日らしく会社=馬場さんの承諾を得た上で結成された天龍同盟は、阿修羅原の解雇などいろいろ流転しつつ平成2年の天龍SWS移籍前まで継続。
ただ私としては、この道の始祖・長州を見ていたこともあって胸に響くものはそんなになかったような…。
眠れるジャンボに噛み付いてそのバケモノっぷりを分かりやすく世に広めた事が一番の功績じゃないかなと思っています。