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2016/03/17

プロレスクラシック(73) ラストチャンス引退覚悟!ジャイアント馬場

録画した日〔2014/10/6:日テレG+〕

昭和59年5月から8月のアーカイブ4試合。
引退覚悟(?)の馬場さんの試合はうち2つです。
5.24横須賀大会。世界最高峰「NWA」のベルトを巻いて登場した弱冠23歳のケリーフォンエリック。
この日の対戦相手であるリックフレアーからベルトを奪ったのは18日前の5.6ダラス大会(Parede of Champions)。日本で客死した兄・デビッドフォンエリックへの手向けとなる戴冠劇でした。
兄の黄色いバラを背にルックスもキャリアも実にフレッシュな新王者ケリー。
しかしNWA本部が課した防衛ロードは一切の容赦なし。
5.22田コロでJ鶴田を相手に薄氷の両リン防衛、この横須賀をクリアできたとしても翌5.25船橋では美獣ハーリーレイスが待ち構えるという、超過酷なジャパンサーキット3連戦です。
一方、ケリーより一回り年上の挑戦者フレアー。
ここはフリッツ親父の目が届かない「中立地」日本。ダラスのグリーンボーイに大人のプロレスを叩きこむべくクールに闘志を燃やします。
こうして始まった見た目も華やかな最高峰戦。
しかし5分過ぎに会場の横須賀市総合体育館がドン臭いポカを投下。なんとケリーがディスカスパンチを繰り出したタイミングで「キンコンカンコーン」と時報のチャイムが大音量で鳴り渡ってしまいました。
そんな脱力系ハプニングにも動じない両雄は、1本目をタイガークローでケリーが取るとフレアーが4の字で2本目を取り返す一進一退の攻防を展開。
23歳のケリーはさすがにフレアー頼みの場面も多くありましたが、同世代の三沢や冬木、川田に同じ事ができたかという視点で見ればやっぱり未来のアメプロを背負う逸材と言っていいのでしょう。
決勝の3本目はエビ固めでフレアーがGet。2度目の王座返り咲きに新婚のベス夫人(=シャーロットのお母さん)も大喜びです。
ケリー側からすると「ダラスのファンは嘆き悲しむでしょう。(by倉持アナ)」という結果ではありますが、NWA的には祭りのあと、あるべき所にベルトが戻ってきたという事となります。
倉持アナによると日本でのNWA王座交代はこれまで6度。もちろんすべて馬場さん絡みの「なかった事」系(奪取→即転落×3回)でした。
この7度目も広義では「なかった事」系か…。
ダラスっ子のダメージを最小限に抑える、遠い日本の地方体育館で起こった18日天下陥落劇でした。

5.13ミネソタ大会でリックマーテルにAWA王座を奪われてしまったジャンボ鶴田。ホームの7.31蔵前でリターンマッチに臨みます。
AWA戴冠により「善戦マン」はすでに卒業しているジャンボ。この日はフィアンセの荒牧靖子さんが来場しており、いやがおうにも気合が入ります。
あまりの爽やかイケメンっぷりが逆効果なのか、なんとなく分不相応なイメージが漂う第34代AWA王者・リックマーテル(28歳)。
倉持アナが事前入手したヘボ情報によると「新婚間もないバラ色の世界チャンピオン」なんだそうです。
ニックやレイス、フレアーらの系譜からは外れるマーテルですが、試合の組み立ては意外とクラシカル。
AWAの帝王・バーンガニア譲りのスリーパーなどは実に堂に入ったもの。もちろんジャンボはお得意の全身痙攣ムーブでこれに対応しました。
結果はジャンボが地の利を生かせず両者リングアウト引き分け。
奪還には失敗しましたが、2度に渡る敵地アメリカ遠征を敢行し16回の連続防衛を果たしたジャンボの業績は、日本人レスラーとして不滅の金字塔と言えるでしょう。

この日のメインは馬場さんが王者ハンセンに挑むPWF戦。
引退覚悟の御大に超満員のお客さんは完全復活を猛祈願。試合前から大馬場コールが鳴り止まず、国技館は異様なボルテージに包まれました。
「西陣織りの豪華なガウン(by倉持アナ)」で決死の舞台に登場した馬場さん(セコンドのパンチは川田利明)。
王座陥落は前年9月、その後2度のリマッチではいずれも奪還失敗。鶴田、天龍世代の成長ぶりを鑑みると「引退覚悟」の煽りもあながち大袈裟なものではありません。
王者ハンセンは目下タッグとシングルのPWF二冠王。
馬場さんが大事に大事に磨き上げた全日の至宝をリングのド真ん中にポイッとほっぽり投げ、獲れるもんなら獲ってみろと超上から目線のマインドゲームを仕掛けます。
試合が始まってからも押されっ放しだった馬場さんですが、秘策スモールパッケージホールドで奇跡のカウント3。
ジョー樋口からなんとロードブレアースPWF会長にまで無差別八つ当たり襲撃をするハンセンの事は見て見ぬふり。バカ息子大仁田にベルトを巻いてもらいやれやれ一安心です。

「皆さんに素晴らしいお知らせあります!」と蔵前の休憩タイムに登場した徳光さん。
「ジャイアンツが6-0で勝ってます!!」と定番の小ボケを挟み「古巣日本テレビに帰ってきた」新生タイガーマスクをお客さんに紹介しました。
そして暗闇に姿を現した日テレ版2代目タイガー。
1ヶ月後の8.26田コロで飛び交った意地悪な「三沢」コールは無し。この日の蔵前にはピュアな正統派プロレスファンが集まっていたのでしょう。

その8.26田コロ大会のメインに揃い踏みした馬場&ドリー&テリーのNWA歴代王者トリオ。超獣コンビの持つPWF世界タッグに挑戦します。
引退(1回目)からちょうど1年経ったテリーはマネージャーという位置付け。倉持アナによると「(引退の要因となった)右膝は90%完治」しているんだそうです。
この昭和59年がラストイヤーとなるハンセン&ブロディの超獣コンビ。
ファンクス原理主義の倉持アナですら「打開策はない!」と断言してしまうほど、そのミラクルパワーはもはや手の付けられないレベルとなっています。
通常営業で十分世界最強なのに当時の流行技・合体パイルまで取り入れるという貪欲な超獣コンビ。
これは馬場さん&ドリーの老獪さを持ってしても打つ手はなさそう…。となると、やっぱりあの兄貴思いの目立ちたがり屋が黙ってられるはずがありません。
終始不規則ムーブでリング下をうろついていたテリーは、兄貴チームがいよいよヤバいとなったタイミングでまずはツープラトン攻撃を妨害。
さらにその後ブロディのキングコングニーからの完璧フォールも妨害すると、反則ガバガバがモットーのジョー樋口もたまらずゴングを要請。兄貴チームは敢えなく反則負けとなってしまいました。
ゴング後は超獣コンビによる怒りの番外リンチが勃発。
今日に限っては100%テリーが悪いにもかかわらず、大本営倉持アナは「テリーは殺されてしまいます!」「マネージャーとして手を出していません!!」とプロパガンダ実況に終始します。
挙げ句倉持アナは「テキサスブロンコ復活か!」「戦いの魂を揺さぶられました!!」などと絶対にあり得ないテリーのリング復帰まで示唆する始末。
結局のところ、馬場さん&ドリーではどうやってもハンセン&ブロディを止められないという哀しい現実だけが残る田コロ決戦でした。

YOKOSUKAやらKURAMAEやらでさらっと刻まれるアメプロ史の重要な1ページ。巨大アーカイブ「WWEネットワーク」に足りないピースが日本には山ほど眠っています。
日本テレビおよびテレビ朝日が相手となるのでマクマホン家をもってしてもさすがに強奪は不可能か。
ただ、方法はどうあれ世界のマニア連中とぜひとも共有したい極上のコンテンツだと思います。